コンテンポラリーダンスと英語とねことパンの日々
    

ルジマトフ『レクイエム』

舞台上には何もない。白いシンプルなパンツを履いた、上半身裸のルジマトフ。
舞台中央での曲線的なムーブメントが続き、そのあとシュパッ、シュパッと直線に腕を伸ばし外へと広がる、
そのような動きのフレーズが何回もニュアンスを違えて続く。












モーツァルトのレクイエムが、ゆっくり、ゆっくりと、響く。
真っ暗な会場に、彼の低く太い声が、大音量で鳴り響く。
ずっとしゃべっている。
咆えている。
嘆いて、いる……。


……ロシア語。なんて言っているのですか?














彼の周りには、広大な黄土。砂漠が広がっている。
暑い。うだるような暑さ……。
何もない。彼の外に、生物は、いない……。











苦しい……。



















右奥に、グリーンと湖が、蜃気楼のようにぼんやりと見える……。
オアシスだろうか。
そして、赤いものがその上にぼんやりと広がっている。
燃えている? 街の人たちの……邪気?



舞台上には何もないのに、イメージが確かに伝わってくる。
彼がどこにいるのか。
何を感じているのか。


ファルフ・ルジマトフの魅力は明白だ。
笠井叡の振付は初めて観た。
けれど、多分これはルジマトフが踊るから、全てを超越した何かを伝えられる。
はっきりとした、形ある、実存の苦しみだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

















バレエの美神2月4日(土)