コンテンポラリーダンスと英語とねことパンの日々
    

フォーサイス再び

フォーサイスは、


●よくわからない、不思議な味だった。


●"One flat thing, reproduced"が彼の代表作なら、彼の振付は別に好みではないかな。
左側の3人とずっと右端の1人が同時にジャンプしてシンクロしている。あるいは、みんないろいろな動きをやっているわりに、あちらのダンサーの何人かとこちらのダンサーの何人かの動きがきれいにまとまっている。バレエっぽい。バレエ的に調和してしまうのが好みでない。
同じシンクロするなら、コミカルにするなどダンサーのいろいろな味が欲しい。ただ同時に揃うだけ。フォーサイスは無機質を狙っているのではないと思うが、それなら何をやりたいのか、いまひとつよくわからなかった。
●振付家が男性であるせいなのか、男性ダンサーの踊りは面白いものが多いのに、女性ダンサーらはどうも冴えが見えなかった。安藤洋子さんも技術的に突出して巧い(巧くなった?)ことはわかるのだが、それ以上のものは感じなかった。


●"One flat thing, reproduced"や"Clouds after Cranach"におけるダンサーの動きのひとつひとつは、テレビ映えする動きだな、と思った。接写でないと、面白みがわからない。近視的な視点。小劇場で観たほうが面白さがわかったかも。Aプロのインスタレーション公演に行ったら良かったかもしれない。


●"7 to 10 Passages"(むしろ呼ぶの面倒だし『モンスター』ということで。)をフォーサイスの代表作と呼ぶなら私はフォーサイスを歓迎する。
パリでは『モンスター(仮)』は"One Flat Thing, reproduced"よりも受けたらしい。ブラボーの嵐。
Flash Reviews on "7 to 10 Passages" and "One Flat Thing, reproduced" by Shena Wilson
私も同じ感性だなあ。
今回の日本公演で日本人は"One Flat Thing, reproduced"にもっとも大きな拍手を送っていた。それが3作品へのまとめた賛辞なのか、"One Flat Thing, reproduced"自体へのものなのかはちょっと判別しかねた。




「よくわからない」ものこそ、私の理解の範疇を超えているもの。*1
わからないけど、泣いちゃう。
しかも、3日経った今でも、何だったのか全然わからない。


今回のフォーサイスみたいに、よくわからなくて*2、面白さもとても感じるわけでなくて、ほとんどピンと来ないに等しいんだけど、本能的に何か感じて泣いちゃう、みたいなのは、現象として、とても面白い。
「よくわからない」ものは、理解したい欲求に駆られる。


ただ、あの公演で8000円や1万円は高いと思う。中劇場で5000〜6000円で観られればよかったな。


 
 



The Bottom Line: 不思議な味、フォーサイスはまた観てもいいかも。

 
 
 


PS 音楽は良かった。フォーサイスの振付と違和感なく融け合っていた。

crosstalkさんのreview

*1:私の世界を広げるきっかけになるかもしれないもの。

*2:私にとってはよくわからなくてフォーサイスが何をやりたいのかよくわからなかった舞台でも、すごくカッコよかった、と大層楽しんだ方たちもおられるようなので、フォーサイスの表現力の問題ではなく、単に私の受容体がフォーサイス向けではなかったのだと思う。