コンテンポラリーダンスと英語とねことパンの日々
    

アラン・プラテル・バレエ団『vsprs』

アラン・プラテル・バレエ団『聖母マリアの祈り vsprs』


2007年5月19日(土)
Bunkamuraオーチャードホール D席3000円


構成・演出:アラン・プラテル
ダンサー・振付:アラン・プラテル・バレエ団
音楽 原曲:クラウディオ・モンテヴェルディ(1567-1643)



客席は空席が非常に多い。2時間弱。
拍手はそれなりに多かった。意外だ。


衣装はポップなカラーのカジュアルファッションに
身をつつむ現代の若者たち。
舞台美術はとても凝っていた。一目で気に入った。
背景に大きな白い山が二つ。無数の小さな白い布が
まるで羽のように山々を覆い、舞台も円状に
覆っている。
音楽はソプラノ歌手+7人?による生演奏。
音楽と歌唱自体は素晴らしかった。
だが、音楽と舞台の構成が単調で退屈した。
10人の男女ダンサー。
突出した表現力のダンサーは見受けられず。


振付のボキャブラリーが少なく感じた。
・後半はずっと10人一様に叫びっぱなしなのだ
・時々、ある人が舞台にセットされた山を
 登ったり降りたり。の繰り返し。
後半1時間はまるで展開せず、
退屈すぎて苦痛に感じた。


30年ぐらい昔の感性。
(『孤独の群衆』(1964)頃の"モダン"な孤独感)
ピナ・バウシュを超えていないと思う。
ピナと全く異なるジャンルであればよいのだが、
ピナと同じような感じだ。


例えば、フォーサイスなど、近年の西洋の
コンテンポラリーダンスには日本の武術や、
アメリカのヒップホップ、ブレイクダンスなどが
取り入れられているが、
そのような動きはなかった。
日常の動作もほとんど見受けられず。
バレエとジャズの限られたステップ、
痙攣、叫び、詩の朗読(英語、日本語、他)、
バック転、アクロバティックな回転、
それ以外に特にない。
人が抱き合うとか恋愛が始まるなどの
ドラマティックな展開があるわけでもなく、
だからといって、振付にバリエーションが
見られるわけでもない。
プラテルは、バレエ以外に
あまり世界を知らない人なのか?
と思ってしまう。


最後は、痙攣しながら全員
マスターベーションっぽい動き。
全員が一様にマスターベーションする
必要は何処に。


プラテルのやりたいことはわかった。
小さな世界なのだ。
精神的に病んだ若者たちの都会に、
寂しくマリアの歌声だけが響き。
その美しさ、はかなさ、せつなさ、、、。
コンセプトは伝わってくるが、
今一つ形に成り切らない印象を受けた。


痙攣自体は不快を呼び起こさなかった。
むしろ深い瞑想状態に入ってしまった。
退屈で何度も寝てしまう。
それもプラテルの意図なのか。


私たちの予想を凌駕するオリジナリティ、
2007年現在のフィーリングを感じたかったが。


言ってしまえば、
コンテンポラリーダンスというより、
モダンバレエ(モダンダンス)系であった。
金森穣が好きな人は好きかもしれない。
私は金森さんの公演はモダンバレエ系で退屈してしまうのだ。
綺麗なのだが、綺麗にまとまっているだけ、みたいな。