コンテンポラリーダンスと英語とねことパンの日々
    

トヨタコレオグラフィーアワード2008ネクステージ(最終審査会) KENTARO!!など

トヨタコレオグラフィーアワード2008ネクステージ(最終審査会)
6月28日(土)14:00〜17:53 
世田谷パブリックシアター 3000円


movie@TOYOTA

山賀ざくろ・泉太郎 『天使の誘惑』
得居幸 『Bring Me a PPPeach. (もももってきてちょうだい2)』
鈴木ユキオ 『沈黙とはかりあえるほどに』
KENTARO!! 『泣くな、東京で待て』
北村成美 『うたげうた』
きたまり 『サカリバ007』
(以上、上演順)

  • 得居幸 TOKUI Miyuki 『Bring Me a PPPeach.(もももってきてちょうだい。?)』

得居幸名で応募したが、
実は5人の女性振付家兼ダンサーから成るカンパニーyummydanceの再応募。


ジャズベースだが、ジャズと言い切れず、
ガード下の風景など、
やや現代社会批評を模したところがコンテンポラリーか。
作風がトヨタコレオグラフィーアワード2004で「次代を担う振付家賞」を受賞した
BABY-Qと似るが、細部の細やかな演出が足りず、
その点で、今一つ何が言いたいかが明確に伝わらない。


5人の女性ダンサーのうち傑出したダンサーが一人おり、
それが多分振付家の得居幸本人だと思ったのだが、
調べたらSTスポット「ラボ20♯15」でラボアワード受賞の宇都宮忍。
ピンクのニットトップスに、黒髪ショートボブのダンサー。


瞬間に人生を懸けた彼女の苦しさが差し迫り、私の頬は涙で濡れる。
「この舞台が成功しなければ、私は死んでしまう」
舞台の全てを統御する強い意志。
十年以上舞台で疾走し続けてきたかのようなプロフェッショナルなダンサーを感じさせた。





  • KENTARO!! 『泣くな、東京で待て』

ヒップホップなのだが、ヒッポフップではない。
いや、異色。所謂東京の"コンテな感じ"でなく、
KENTARO!!の作品と断言していい。


中国などアジアのメロディアスな音楽を、身体で表現する。
全くコンセプチャルでなく、ふんわりした音楽が彼自身を通じて
血肉ある人間として3D化される。
その意味で、今回最もバレエ的な作品だった。
(振付は全くほぼヒップホップベースなのだが。)
体育座りした足を音楽に合わせて横にずらしたり、顔を背けたりする、
あのムーブメントは印象的で、忘れられない。
素晴らしい振付で、ピナ・バウシュの『ヴィクトール』を初めて観たときのように、
鮮やかに脳裏に焼き付く。


最初は、暗闇のなかスポットライトで現れたKENTARO!!がコント。
コントのシーンが3、4件。チェルフィッチュみたく、言葉に合わせ
身体を貧乏ゆすりだけどそうではないようにくねらせながら。
みずほ銀行に急いでお金を降ろしにいって、
CDを買わなきゃいけなかったんで、
道の途中で、
僕ヒップホップダンスを教えてるんですけど、
クラスを辞めた小学生の母親に出くわし、
挨拶しようとしたら怒った顔で睨まれたあげく無視され
ババアと心の中で罵ったけど、
追いかけたらサティにいて、
この辺は買い物できるところっつったらサティぐらいしかないんすよ、
サティで顔を合わせたらついに無視できなくて
向こうから挨拶してきた話とかに、
前半は声をあげて笑いっぱなしの私と観客。


(冒頭描いた中盤シーンの後、)


「何をやっても報われない気がして」などの人生的悩みをシンプルにテロップした映像の後に、
それでも「皆大好きだ!」と叫び、
「泣くより叫ぼうと思う」とナレーションが入る後半への無理矢理な展開に、
体育会系のノリを感じた私は、ついていけなくなるが、
それでも、拳を振り上げては突き降ろしを延々と繰り返し、舞台は暗くなっていく。
憤りを外在化するKENTARO!!に、彼の生き方を感じた。


音楽がヒップで秀逸。
KENTARO!!の最期は、「KENTARO!!は音楽でした。」というテロップが流れそう。


   ☆ ☆ ☆


トヨタコレオグラフィーアワード2008ネクステージ特別賞及びオーディエンス賞をダブル受賞。
大賞(次代を担う振付家賞)は受賞しないだろうが、観客には確実に受けただろうという読み通り。


KENTARO!!
(私が東京のコンテンポラリーダンスで最も好きなカンパニー ニブロールに出演した。
 7月にKENTARO!!ソロ公演有。)


公演当日に発表された受賞結果は以下:

■次代を担う振付家賞:
鈴木ユキオ「沈黙とはかりあえるほどに」
以上1名
ネクステージ特別賞:
KENTARO!!「泣くな、東京で待て」
以上1名
■オーディエンス賞:
KENTARO!!「泣くな、東京で待て」
きたまり「サカリバ007」
以上2名



鈴木ユキオ(金魚) 『沈黙とはかりあえるほどに』
(次代を担う振付家賞を受賞したため、一応言及。)
白いシャツにブラックパンツの正統派なセクシーの男(浅野忠信+キムタクみたいな。)と
ベージュのシャツに朱のスカートの正統派のセクシーな女。
女はエロい。どのような格好をしても、性交中に見える。
男の、洗濯板をこする動作と間。こする動作。間。偶さか吹かれる口笛。
正統派の間と音の感覚。(人気TVドラマの音響みたいな。)
金太郎飴みたいにずっと続く、バリエーションに欠ける振付。
土着的な快。。。
私は安眠した。