色――染物屋じいちゃんの残してくれたもの――
会ったこともない祖父は、
染物屋の商人で、関東中、染めた反物を売って回ったという。
私の叔母はデザイナーで、
その作品は都内百貨店で常時販売されている。
弟はウェブデザイナーである。
今、私は化粧品の開発に携わることになった。
祖父は、職場の事故で亡くなった、
と聞かされたのは、私が23歳のときだ。
詳しくは公にできないが、
意思半ばで逝ったのでは、と想像する。
まるで私たち姉弟が、
祖父の意思を引き継いでいるかのよう。
そうでなくてもよいのだが、
引き継いでいると考えたほうが、
支えられている感じがする。
おじいちゃんと一緒に
共同作業をしている気がするから。
家系ってあるみたいだね。
医者ばかりの家系とか。
政治家が多い家系とか。
うちは商業美術の家系だろうか。
多くの場合家系は隔世遺伝すると、
ある人が言っていた。
そうかもしれない。
両親は、
平凡なサラリーマン(エンジニア)と
教師なのだが。
二人とも画才があり、
私たち姉弟にも、それは引き継がれた。