コンテンポラリーダンスと英語とねことパンの日々
    

NYCコンテンポラリーダンス事情〜意外とモダンな人びと

NYCでは、意外とモダンダンスが好きな人たちがいた。
モダンダンスを作ったマーサ・グラハムを敬愛する人びと。


ダンススタジオDNA (Dance New Amsterdam)で会ったダンサーの女の子は、


「コンテンポラリーよりモダンのほうが好きなんだ」と言った。


NYUのルームメイトは、小さい頃からみっちりバレエの指導を受け、
その後6年間モダンダンスカンパニーに所属したという、元プロ志望ダンサーの大学生。


一番好きな振付家は、マーサ・グラハム、だという。


私が、「マーサ・グラハムも結構好きだよ、一番好きなのは、ピナ・バウシュ(ドイツ人)……」
と言った途端に苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


そのあとに、「……あと、トリシャ・ブラウン(アメリカ人)」と、続けたけど、聞いてない。
マース・カニンガムも知らなかったし、どういうこと?
カニンガム、8月に亡くなりましたね。


失礼だが、歴史の短いアメリカのダンスの文脈において、「モダン」とは、古き良き古典を意味するのだろう。


アメリカにおいて、モダンダンス、またはコンテンポラリーダンスをやってるというと、
ほぼアルビン・エイリーのようなダンスのことを想起される。
いや、そうじゃないんだって。


アメリカのFOX放映のダンスオーディション番組『So You Think You Can Dance』は、
徹底してエンタメ系のダンス、ショーダンスだ。
ショーダンスが、アメリカ人にとっての、現代ダンスなのだ。
私にとって、あれはコンテではない。ジャズ系ショーダンスなのだ。


  ☆  ☆  ☆


リンカーンセンターで、市民は、夏に、無料で、コンテンポラリーダンス公演を観覧できる。
しかもそのマイナーな公演に、400人以上集まる。
ニューヨークのアート・ファンの裾野の広さに驚かされた。
小さい頃からこういうのを観て育ったら、本当いい情操教育だよな。


セントラルパークも、夏は、無料のコンサートが多く開催される。
ユニオンスクエアでも、同様。
しかも、質が高い。
普段チケットが高すぎて手が出ないようなスーパースターが、無料で歌を披露する。
平均値も、高い。
セントラルパークで、歌うグループは、プロが多く見られる。


ストリートのアーティストに、市民らがあんなにたくさんチップを払う光景は見たことがない。
通りがかる人ほぼ全てが、1ドル札以上を投げていた。


地下鉄の駅、車両の中、頻繁に、歌う、弾く、鳴る。
中年のアフリカン男性が多い。10歳と思しき白人の男の子がキーボードを弾きこなす。


音楽が溢れる街、アーティストの街、
それがニューヨークだった。


  ☆  ☆  ☆


アメリカで30年以上好評を博すダンスカンパニーPilobolusをジョイス・シアター(日本の世田谷パブリックシアターのような位置づけの、ミニ・シアター)で観た。
4作観た。
最初の3作は、ドタバタ・コメディー劇。 幕間の劇みたいな。 衣装は黄や赤の原色。サーカスのようにカラフル。
ど突いたり、はたきあったり、アクロバティックな動きが多い。
4作目は、イスラエルの気鋭振付家インバル・ピントとアブシャロム・ポラックが、ピロボロスの振付にアレンジを加えた作品。
最後の、しがない中年男性が、キャメルの古い鞄を携え、開けるシーンで、涙が流れた。
衣装はモノトーン。抑えた、乾いた笑い。
洗練を感じた。ヨーロッパは違う。どちらも、ひとつの味でしかないけれど。


次は、パリに行こう(と、まるきり単純な行動パターンのmeowowであった)。